東京慈恵会医科大学附属病院脳神経外科 脳血管内治療センター

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病気について脳動脈瘤

脳動脈瘤とは

脳の血管(動脈)一部が風船のように膨らんでコブ状になったものです。無症状であることが多いですが、動脈瘤が大きくなると神経の圧迫による症状が出ることもあります。脳動脈瘤の破裂はくも膜下出血の原因として最も多いです。

くも膜下出血とは

脳表面の血管(病変)の破綻によって生じる出血です。原因として脳動脈瘤の破裂が最も多く、ついで脳動静脈奇形が多いです。特に脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は急速かつ重篤な経過を辿ることが多く、重度の後遺症を残したり生命に関わることもあります。

当院での診療

近年では脳ドックなどで偶然発見される未破裂脳動脈瘤が増えています。当院では全国から年間600-700例の新規患者さんが紹介され2013年以降で8000例以上の診療歴があります。最も重要なことは破裂の危険は個々の動脈瘤によって異なり、動脈瘤の場所や大きさによっては保存的治療でも破裂することなく一生そのままの方が多数いらっしゃることです。これまで治療を受けられた患者様と経過観察を選択された患者様のリスクを分析し、最適な治療の選択肢を提示できるよう心がけております。

手術の適応

脳動脈瘤の外科的治療の目的は「破裂予防」と「不安の軽減」です。
当院ではこの2点を重視して外科的治療の適応を決めています。その適応基準の一つが発見時の脳動脈瘤のサイズです。近年未破裂脳動脈瘤の破裂率に関しての研究データが数多く発表されております。また我々の施設内でのデータを解析した結果、脳動脈瘤の破裂率は“場所”と“大きさ”に相関することがわかってきました。
当院で経過観察した脳動脈瘤の破裂に関する研究では、2-4㎜の動脈瘤は年間破裂率0.3%、5-6㎜のサイズの動脈瘤は年間破裂率3.1%、7-9㎜で2.9%、10-24㎜のサイズは10.2%でした。そのため、原則的には5㎜以上のサイズの動脈瘤に対して手術を検討しています。しかしながら、5㎜未満であっても、経過観察中に増大、変形をきたした場合は手術を検討することもあります。
また、脳動脈瘤が発見されたことで、破裂に対する懸念から日常生活に不安が生じ、それまでの日常生活に支障をきたしている場合、もしくは経過観察することに対する心配が強い場合などは、動脈瘤が小さくても手術を検討する場合もあります。
このように脳動脈瘤の手術適応に関しては様々な要因が関わりますので、時間をかけて理解していただくことが大切です。

脳動脈瘤コイル塞栓術

原則として最低2名の脳血管内治療医が担当し、基本的に全身麻酔で行います。内径約2-3㎜のカテーテル(ガイディングカテーテル)を頚部の動脈(内頚動脈あるいは椎骨動脈)に留置します。次に内径500㎛-1㎜の極細カテーテル(マイクロカテーテル)を慎重に動脈瘤まで誘導します。誘導したマイクロカテーテルからコイルを動脈瘤の中に慎重に挿入します。コイルは直径が1㎜から30㎜まで各種のサイズがあり、動脈瘤の大きさや形状にあわせて選択されます。通常6㎜程度の動脈瘤であれば5-6本のコイルを使用して完全閉塞することができます。瘤が完全に閉塞されていることを血管撮影で確認して手技を終了します。
動脈瘤の入り口(ネック)が広く、コイルが動脈瘤の中で安定しない場合はステントを用いることもあります。

コイル塞栓術の課題

コイル塞栓術の課題は、開頭クリッピング術に比較して治療した脳動脈瘤の再開通が生じる可能性があることです。コイルは脳動脈瘤を傷つけないために非常に柔らかい素材で構成されています。よって治療後の血流にさらされることによって形状に変化が生じ、閉塞したはずの動脈瘤の一部が再度開通してしまうことがあります。ほとんどの場合は治療後一年以内に発生することが多く、そのために定期的な検査(MRI)をお勧めしています。治療後の定期検査にて再開通が発見された場合、その度合いにより再治療が必要となることがあります。

脳動脈瘤内にマイクロカテーテルを誘導
脳動脈瘤内にマイクロカテーテルを誘導
マイクロカテーテルから脳動脈瘤内にコイルを挿入
マイクロカテーテルから脳動脈瘤内にコイルを挿入
コイル
コイル
提供:Stryker社

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